2008年10月

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グッドイヤー製法靴の修理(オールソール、底交換)

古いJ・M・ウェストンの靴の底交換を依頼されました。
市販靴ですが、10万円ほどもする高級靴です。 IMG_1486.JPG
かなり古いようで、アッパーも傷んでいますが、まだまだ履けそう。
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底は前部に穴が開いていて、オールソール交換が必要です。
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分解していくと、高級な靴ですがやはり市販靴、案外簡素な作りという印象、かかとは鉄製の釘で止まっているだけ。
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底を全部はがして、ウエルト部分に残った出し縫い糸を一つづつはずしていきます
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きれいに糸を取れました
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やはりかなり古いと見えて、ウエルトを縫うためのリブという布製の山が一部、剥離しています。木製のシャンクも折れていました。(木製のシャンクを使っているあたりはやはり高級靴ですね)
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リブを接着し、シャンクをファイバーで補強して、コルクを詰め形を整えます。
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底の革を付け、隠し縫いの出し縫いをするための切れ目を入れます。
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出し縫いをして切れ目を伏せます。このあたりは当店のハンドソーンウエルト製法と同じ作り方です。
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出し縫いはもともと縫ってあった穴にうまく針が通るように縫っていきますので、ウエルトを傷めることはありません。
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踵の取り付け作業・市販品の製造のように形になったものをそのまま取り付けるというわけにはいきません。
踵のカーブ、形に合わせて丁寧に削って合わせ、ペースという木製の釘で止めます。
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滑り止めゴムの付いた化粧革をとりつけ
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着色して仕上げます。
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底だけ見ると、新品の靴のようにきれいになりました。
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アッパーも磨き上げて、内部を修理し、きれいになりました、アッパーの皮革が質の良いものなので、古くても磨けば味が出てよい感じです。
グッドイヤー製法の靴ならではの底を交換して手入れすれば、長く履けるという良い例ですね。

修理といえ、ハンドソーンウエルト製法の靴を製作しているからこそ、丁寧な、きめ細かな対応が可能です。
「上記、底交換&補修の料金 ¥12500円 」 でした。(2005年)

オーダーメイド靴 靴工房ハンザワ http://kyoto-hanzawa.com/

天然皮革の種類と特徴

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靴の素材として求められる柔軟性、耐久性、通気性、加工性など、一つ一つの特徴だけをとれば、皮革の他にもいろいろな素材が人間の手によって開発され優れた素材もありますが、すべての特徴をバランスよく持っている素材は他にはありません。
皮革は靴の素材として最も優れた素材といえます。 動物から剥ぎ取ったものは皮、なめしという作業をして始めて革になります。
なめしとは、皮のコラーゲン繊維と各種の化合物を結合させ、腐ったり、変質しないように変化させる作業を言います。
なめしをした後、染色や各種加工をして、革製品の材料として出荷されてゆきます。
皮革の種類によってそれぞれの特徴があり、さまざまな加工が施されています。


素材による分類


牛  
流通量が多く入手しやすいためにさまざまな商品に使われています。革靴では、その大部分が牛革で作られていると言っても良いくらい、多く使用されている素材です。それだけに牛革は年齢や部位、雄雌等でさらに細かく分類されて、利用されています。
 
牛革の分類

カーフ   生後6ヶ月未満の子牛の皮革で、牛革の中で最もきめが細かく、しなやかで美しい艶を持っています。比較的薄く、高級婦人靴に使用されます。当店でも、パンプスや外反母趾の方の婦人靴などに多く使用しています。

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キップ  生後6ヶ月から2年未満の中牛の皮革で、中でも1年未満のものはカーフに準じてきめ細かく、しなやかです。カーフ同様、高級婦人靴に使用されたり、薄手の高級紳士靴にも使用されます。 生後2年未満のものでも十分にしなやかで滑らかな肌を持っています。厚みがあるため、高級紳士靴に使用されます。 ちなみに、欧州ではキップという分類がなく、このクラスまでカーフと呼んでいるようです。イタリアンカーフなどで厚みがある皮革はこのクラスとなります。

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成牛 2歳以上の牛革で、最も多く利用されている、スタンダードな牛革です。 大人の牛ですから、厚みがありますが、キメは荒く、銀面(革の表面)をきれいに見せるためにいろいろな加工をして、傷やキメの粗さを隠す工夫をしてあるものが多くあります。(ガラス張り、シュリンク、型押し、オイルレザーなど) カーフ、キップに比べれば、比較的安価ですが、元の素材や加工方法により多種多様な製品があり、一概には言えません。 通常、市販靴では、天然牛皮革といえば、このクラスになります。 当店でも、しっかりした厚みのある靴に使用します。

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豚  
やわらかく摩擦耐久性に優れているため、主に裏革に使用されます。 3つの毛穴が規則正しく並んでいるのが特徴です。カジュアルな靴や、中敷にも多く使用されます。

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馬  
靴用としては、おしりの部分をコードバンと言い、厚く緻密な繊維質を持っているので、摩擦耐久性に優れ、使い込むほどに、独特な味のある艶が出ます。反面、裂けやすいという特徴があるため、薄くしたり、繊細な加工をした靴には向きません、また、硬く厚みがあるので、釣り込み作業が困難で、手作り靴の場合は、経験が浅いと扱いにくい素材です。採れる範囲が少なく、貴重なため、当然高価です。高級紳士靴に使用されています。 他の部位はやわらかく滑らかな特徴を持ち、高級靴の裏革や中敷に使用されることがあります。

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ダチョウ
(オーストリッチ)
羽を抜いた後の特徴的な凸凹があり、超高級な素材として、靴やハンドバック、財布などに珍重されています。

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カンガルー
  
薄く、軽く、丈夫でしなやかなため、野球のスパイクシューズなど、スポーツ靴や高級婦人靴に多く使用されます。野生動物のため細かな傷が多くあります。流通量は少なく、高価な素材です。

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爬虫類その他  
トカゲ、蛇、ワニなど、表面の特徴が面白い素材ですが、高価で加工も難しく、靴などの製品となっても、当然高価なものになります。 最近では、魚類やカエルなど、さまざまな皮革があるようです。部分的な使い方をすると面白い靴ができます。

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加工による分類

ぎん付き(本染め)
なめし、染色をした、天然皮革を象徴するスタンダードな仕上げの革です。天然皮革本来の柔軟性、肌さわりなどを生かした仕上げの方法です。

ガラス張り
 
成牛皮をなめし、ガラス板などに貼り付けて乾燥させ、表面をキレイにバフ、塗装仕上げした革です。成牛革表面の傷やきめの粗さと言った欠点を隠し、均一な革になりますが、皮革本来の肌は失われます。安価な製品に多く使用されます。 オイルレザー なめしの仕上げ段階などで、油分を加えて、しっとりしたぬめり感を持たせた革です、比較的水に強い性質がありますが、油分の補給が必要です。

起毛革 
革の表面をサンドペーパーでけば立たせた革で、ヌバック、スエード、ベロア、など起毛の細かさ等によって、分かれてます。バックスキンと言う言い方をすることもありますが、本来のバックスキンの意味は牡鹿の革のことで、起毛革=バックスキンは間違いです。

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エナメル 
革の表面に樹脂塗装等をして、光沢ある艶を出した革です、製造工程に手間がかかるようで、最近では製造するメーカーが少ないようです。

揉み革  
革を揉んで肌にシボをつけた皮革

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シュリンクレザー  
薬品を使い、表面を縮ませてシボをつけた皮革

型押し 
加熱した型板で高圧プレスして、型をつけた皮革、トカゲやワニなど、さまざまな模様があります。

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メッシュ  
細く裁断した革を編み上げて織物状にしたものや、細かく穴を開けた皮革

撥水レザー  
撥水加工された皮革、撥水材を内部まで染み込ませたものから、表面に散布したものなど、効果はさまざまです。


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ハンドソーンウエルト製法とグッドイヤーウエルト製法の違い

高級紳士靴の製法として名高いグッドイヤーウエルト製法は、電気や大型の機械が無い時代、数百年も前から延々と引き継がれて作られてきた、二重縫いの手縫い靴、つまりハンドソーン(手縫い)ウエルト製法の構造を、機械で製作できるように改良された製法です。
当時はこの複雑な製法は機械化できないとされていましたが、その方法を開発した人物がグッドイヤーという人で、その名前が冠され、グッドイヤーウエルト製法と呼ばれています。
では、この二つはまったく同じなのか?というと、そうでもありません。
ハンドソーンウエルト製法は、手の込んでいるだけで価格が高い、だったらグッドイヤー製法で良いのでは?
と思われる方もおられますが、実はかなりの違いが有り、ハンドソーンの優位性も多くあります。
その構造の違いを紹介したいと思います。


ヨーロッパの有名メーカー、グッドイヤーウエルト製法の靴を分解してみました。    
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中底は約3mm厚、その中底に「リブ」と呼ばれる布製の山を接着してあり、その「リブ」に対して、アッパーとウエルトを機械で縫い付けるという方法で製作してあります。
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接着材で「リブ」という布を接着してあるので、古くなるとやはりはがれてきます。
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中底と底の間にはコルクがつめてあります。
機械で縫いやすくするため?リブの高さがあるので、その高さを埋めるために、中底よりも分厚いことがわかります。
当然、底の厚みはかなりの分厚さになります。
ウエストの部分も厚くどっしりと頑丈な感じでスマートさはあまりありません。
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対してハンドソーンウエルト製法では、約5mmほどもある厚手の中底に溝を掘り、縫うための山を作り、その山に対して、アッパーとウエルトを一針ずつ、手作業で縫いつけてゆきます。
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中底そのものに縫い付けているので、はがれるということはありません。
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リブのような異質なものが無いために、コルクも必要最低限です。
グッドイヤー製法に比べて、骨格ともいえる中底が分厚く丈夫、つまり耐久性に優れています。
それでいてリブのような異質なものが無いために、曲がりやすく、足になじむのも早いはずです。
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手作りである特徴として、ウエストラインが踵に近づくにつれて、細くなるというように、スマートで繊細な作りにすることも出来ます。

 

と、いう感じでハンドソーンウエルト製法はただ手がかかっているというだけではなく、グッドイヤー製法に比べて、多くの優位性があるわけです。

グッドイヤー製法は機械製法であるための制約も多く、一足一足のオーダーメイドには向きません。
細かな対応が出来るということも、ハンドソーンウエルト製法の特徴です。
ハンドソーンウエルト製法の詳しい構造は、「ハンドソーンウエルテッド製法の構造と特徴の紹介」をご覧ください。


■古いグッドイヤーウエルト製法の靴の中底を内側から撮影したものです。■
足の形がくっきりついています。
このように、中底が自分の足の形にクゼ付けされて、足になじんでゆきます。
グッドイヤーウエルト製法も、ハンドソーンウエルト製法も、長く大事に履いてこそ、値打ちのある靴です。
修理をしながら、手入れをして履けば、一生モノと言っても過言ではありません。
エコですね。

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ゴルフシューズ

サドルシューズのデザインで、圧着製法のゴルフシューズを製作しました。

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圧着製法スポンジ系底材で軽く仕上がっています。
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もちろんスパイクピンをご自分で交換できます。
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この数年はスパイクを取り付けるための金具の入手が困難でゴルフシューズのオーダーメイドをご依頼いただいても断わっていましたが、代用できるものを見つけましたのでオーダーの製作可能です
このようなタイプの圧着製法なら、通常の5000円ほどのアップです。(スパイク含まず)。色は限られますが、撥水加工された皮革もご用意できます。

ゴルフのようにスポーツシューズは足にあっていないと、せっかくの楽しみ苦しみに変わってしまうことも。
脚長差があったり、足にトラブルがある、市販品で合うものが無いなど、お困りの方、お気軽にご相談ください。

社交ダンス用靴 ラメ&ゴールド

ラメ加工された皮革とゴールドメッキされた皮革を使い、製作した社交ダンス靴、華やかな舞台にぴったりのキラキラゴールド。 
当店の店主は社交ダンス暦も20年ほどのベテランです。

 

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ハンドソーンウエルト製法靴をゴルフ靴へリフォーム

ハンドソーンウエルト製法で製作された靴をゴルフシューズへリフォームしてほしいという依頼 IMG_1948.jpg
脚長差が5cmほどあるので、市販のゴルフシューズが履けないため、十数年前にオーダーメイドで製作した、靴内部で左右差をつけた靴を、ゴルフシューズにリフォームしました。 IMG_1941.jpg
古い靴なので、分解するとウエルトの縫いがほつれて弱くなっていたので、ウエルトを一部分縫い直して補強しました。
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ゴルフシューズの製作は滑り止めのスパイクを 取り付ける加工が必要で、この数年は、取り付けに必要な台座が入手困難になっていて、オーダーでの製作も、リフォームも断らざるをえない状況でしたが、何とか代用できる部品を入手して、少し加工して使用しました。

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これで、底替え出来る靴であればリフォームでゴルフ用スパイクを取り付けることも、オーダーメイドでゴルフシューズを製作することも、出来そうです。

脚長差が有る方の製作例

脚長(脚の付け根からかかとまでの長さ)に差があるお客様

製作例1

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一見、普通の靴ですが・・・。
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底の厚みで15mm程度、中敷で5mm程度の補高をして合計20mmの差をつけてあります。

 製作例2

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パンプスですが、ヒール部分で10mm程度、中敷で20mm程度合計30mmの補高

長年、脚長差が有るまま生活してこられた方が、 いきなりその差をなくせば、やはり違和感も生まれますので、 お客様の感覚を大事にして、ご相談、調整しながら、 どのように製作してゆくかを決めさせていただきます。  
左右50mm、80mmといった大きな差が有る製作実績も有ります。

製法の紹介

靴の製法は、主に底付けの方法の違いで分類されています。
底の素材は、主に革底と、化学合成(ゴム系・スポンジ系・ウレタン系など)に分類されます。
当店では、革底はハンドソーンウエルト製法とマッケイ製法、合成ゴム系・スポンジ系は圧着セメンテッド製法を製作しています。
ウエルト製法でゴム底、マッケイ製法でゴム底ということも可能です。

当店で製作している製法

革底 ハンドソーンウエルト製法(手縫い靴)
       
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数百年の歴史がある代表的な手縫い靴の製法で、本格的なオーダーメイドの高級紳士靴でしか採用されない、たいへん手の込んだ、贅沢な作りの製法です。
中底が厚くしっかりしていて、馴染めば足の形に癖付けされ、吸排湿性があり、構造的にも丈夫で安定感があり、型崩れせず何度も底替えでき、しっかり手入れすれば長く付き合える靴です。
反面、硬く、重いために、足に馴染むには時間がかかります。
底も含めて、素材のほとんどが皮革であるため、手入れも怠れません。
この製法を機械化したグッドイヤーウエルト製法の靴が、高級紳士靴の代表的製法として、広く採用されていますが、ハンドソーンウエルト製法は、超高級な紳士靴の代名詞的な製法であり、靴作りの究極と言われています。 

 

 革底 マッケイ製法

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ウエルト製法と並んで、高級紳士靴に多く用いられる革底の製法です。
ウエルテッド製法より構造が簡単で、中底からアッパーを挟んで、底材とを一緒に、大型の専用ミシンで縫い付けます。
ウエルト製法に比べ、中底や底材が薄めで、軽く屈曲性が良く、ファッション性の高いイタリア製の、スリッポンタイプ、ローファータイプの靴に多く用いられています。
耐久性はウエルト製法に劣ります。また、構造上、水にも弱く、注意が必要です。

合成ゴム・スポンジ等 圧着セメント製法

アッパーと底材を接着剤で貼り付けると言う方法で、合成ゴム系、スポンジ系など市販靴のほとんどがこの製法です。
軽い素材、耐久性のある素材、いろいろな選んでいただけます。
市販靴の多くは修理不可能ですが、当店で製作した靴は、底替え、かかと交換可能です。

 

 

雑誌記事からのデザイン

雑誌の記事に掲載があったデザインと同じような靴がほしいと、探したがなかなか見つからないとのことで、ご注文いただきました。 IMG_1935.jpg 某メーカー製のサンダルですが、ハワイで8万円で購入と言う記事。 IMG_1928.jpg お客様の足に合わせ、ヒールの形や高さなど、細部はアレンジ、変更して、まずは黒を一足、製作しました。 IMG_1929.jpg 良い感じに出来たのでもう一足、今度は茶色でとのことで、2足目を製作しました。

外反母趾のお客様の製作例 

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重度の外反母趾で親指付け根が痛く、市販の靴はなかなか履けないということでした。外反母趾で親指の付け根や小指の付け根、その周辺が痛いと言うお客様の場合は、デザインと素材選びが大事です。パンプスやスリッポンのような幅を締め付けて履く靴は、どんなに工夫してもどこかに無理が出てきます。下の写真のように、紐靴やマジックベルト式の靴をお勧めしています。

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また、使用素材は、牛革の中でもやわらかくしなやかなカーフや、薄くて軽く、それでいて丈夫なカンガルー革などが最適です。痛い部分に縫い目や重なりがこない様に工夫して、設計、製作してゆきます。 (軽度の外反母趾で痛みも無い方はパンプス、スリッポンでも調整して製作可能です、まずはご相談ください。)