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ハンドソーンウエルテッド製法の構造と特徴の紹介

 

靴作りが機械化される以前の手縫い靴の代表的製法がハンドソーンウエルテッドと呼ばれる方法です。

市販靴ではこの手縫い靴の製法を機械化したグッドイヤーウエルテッドと言う製法の靴が高級本格靴として一般的です。

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構造図 
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切断写真 
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拡大写真

ハンドソーンウエルテッド(手縫い靴)の特徴と製法 数百年も前から伝わる手縫い靴の代表的製法であり、靴作りの完成形でもあります。 
厚みが4mm前後もある中底のその厚みの中に麻糸を通しアッパーとウエルトと言う細革とを縫い合わせ、その細革に対して底材を縫い合わせると言う、複雑な構造をしています。
中底が厚くしっかりしていて、構造的にも丈夫で安定感があり、型崩れせず、何度も底替えでき、しっかり手入れすれば長く付き合える靴です。
重さがあるため、振り子の原理で長く歩いても疲れにくく、直接靴の内部まで通る縫い目が無いので比較的、耐水性も優れています。
始めは硬く、馴染むのに時間がかかりますが、履き込めば、中底が自分の足の形に癖付けされ、足に馴染んできます。
底材が全て天然素材でできていることから、吸排湿性が良く、足ムレもしにくいと言う特徴があります。 このように、複雑な構造で、多くの材料と技術、時間がつぎ込まれている製法のため、コストがかかり、軽さや屈曲性にも限界があります。
昔は靴が高価であり、何度も修理して長く履くのが当たり前だったので、修理もしやすいような構造になっているとも言えます。
この複雑な製法(特に中底とウエルトを縫い合わせるすくい縫い)を機械化した製法がグッドイヤーウエルテッド製法ですが、大型の機械が必要で、中底の加工もリブと言う、布で作った張り出しを接着するなどの加工が必要なため、ある程度の大量生産品で採用されています。
少量で多彩な対応が求められるオーダー靴の場合は、ハンドソーンウエルテッドが一般的です。



工程の紹介 
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まず、ラストに中底を釘で仮止めし、上の写真や下の図のように、中底にすくい縫いをする溝などを作ります。
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アッパーの釣り込みをした後、写真のすくい針と言う道具で中底、アッパー、ウエルト(細革)に穴をあけ、麻糸に松脂をつけて強度を高めた糸で、チェーンステッチで縫いつけていきます。この作業をハンドソーンウエルテッドと言い、製法の名称となっています。   IMG_0874_16002.jpg
厚み4mmほどの中底に2mmほどの深さで針を刺し込んでいくわけですから、靴の内側に針先が出ないように、同じ間隔で、針が出る場所もそろえて縫い付けていかなければなりませんし、力も必要で、細い糸を手に巻きつけて力いっぱい引っ張るので、分厚い革の手袋をしていても、一足縫い終わった頃には、手が真っ赤に腫れていたります。 
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ウエルト(細革)を縫い終わったら、余分なところを切り取り整えて、段差を埋めるコルクをつけて、底面を平らに整えます。 
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 底材の貼り付け 5mmほどある底材の皮革を貼り付けて形を整え、隠し縫い(出し縫いの糸を隠して見えなくする縫い方)をする切れ目を入れていきます。 hyo.jpg

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薄く切り込んだ革を起して、出し縫い用の大型機械で底材とウエルトを縫い合わせます。 IMG_0935_16001.jpg

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超高級な手縫い靴の場合は、このダシ縫いも手で縫っていますが、ウエルト縫いと違い、機能的にも強度的にも、手縫いと機械で縫いに差はほとんど無いと考えています。

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隠し縫いのために開けた部分を接着剤を塗り貼り付けて元通りに戻します。 IMG_0937_16001.jpg

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一見、縫ってあるとは判らないようにします。
次にかかと部分を固定します。
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かかとは、底や中底に使う革を数枚重ね合わせ、ペースと言う木製の釘を打ち込んで固定します。一部、金属釘も使用しますが、木製の方がしっかり食い込み、また、削ることもできるので作業性にも優れています。年数がたっても、金属だと錆びて機能しなくなりますが、木製だと、しっかり効いています。 P10104821.jpg
かかとの滑り止めをつけて、ほぼ形になりましたが、これで完成ではありません。 P10104761.jpg
底材がほとんど革なので、この時点では、でこぼこ、がたがたの汚い状態です。写真のような半月形の金ヤスリなどで形を整えてゆきます。
このあたりの作業は、まるで木工細工の工芸品のような、繊細な作業です。

形を整えたら、ペーパーできれいに仕上げます。 着色して、熱したコテを当ててコバ面をきれいに整えてゆきます。
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すっきりきれいに仕上がりました。後は、きれいに艶が出るように、磨いてゆきます。
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かかとに化粧クギを打って、後は仕上げ作業で完成です。 P10105201.jpg

ここまで見ていただければ判ると思いますが、大変手の込んだ、時間がかかる製法であるため、合成の圧着セメント式と比べると、それだけ料金も高くなります、が、それ以上の価値、意味が十分にあり、また、手入れをし、修理をしながら、長く履いていただける靴です。

底の素材が革なので、滑りやすいのが革底の欠点ですが、色々工夫もできます。 DSCF002011.jpg
滑り止めのゴムが埋め込まれたタイプ。
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通常の革底に、滑り止めのゴムを貼り付けたタイプ DSCF00261.jpg
ウエルテッド製法の場合は、ウエルトに対して縫っているので、コストを少しでも抑えたい場合、底に縫い目を出したままにすることもできます。
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こだわりの靴の場合、写真のような半カラス仕上げや、丸コバといった、さらに手の込んだ仕上げもできます。